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2025年11月13日
株式会社日立ソリューションズ・テクノロジー
画像や映像などの視覚情報を理解し、文章による説明や応答を生成できるAI「VLM(Vision Language Model)」を活用した実証実験を開始
フロントラインワーカー向けDXを加速
株式会社日立ソリューションズ・テクノロジー(本社:東京都立川市、取締役社長:平間 顕一、以下、日立ソリューションズ・テクノロジー)は、映像や画像とテキストを統合的に理解するVision Language Model(以下、VLM)技術を活用し、フロントラインワーカーにおける安全管理や業務効率化の有効性を検証する実証実験を開始しました。
近年、フロントラインワーカーの現場では、安全行動の徹底や作業手順の遵守を効率的に確認・記録する仕組みが不足しており、レポート作成などの事務工数が大きな負担となっています。また、従来のAIは、天候や環境要因による人や物体の誤検知・過剰検知、予期せぬ状況への対応が課題となり、運用負担やコスト増加を招いてきました。
これらの課題に対応するためには、映像の内容を文脈ごとに理解し、自然言語で表現できるVLMの活用が有効です。VLMを用いることで、誤検知や予期せぬ状況の検出精度を高めるとともに、安全行動の可視化やレポート作成の自動化が可能となります。
日立ソリューションズ・テクノロジーは、カメラ映像から異常や特定イベントのみを高精度に抽出する画像認識エッジAI技術を組み込んだ独自の“アダプタ”を強みに、VLMと組み合わせたソリューションの実証実験に取り組んでいます。

図 VLMを活用した生成AIソリューション
エッジ端末でリアルタイムに映像を解析し、サーバー側の生成AIアプリケーションがその内容を理解・分析することで、現場での即時性と高精度な状況把握を両立し、安全管理の向上と運用効率化を支援します。
本実証実験は、設備管理者の人手不足や働き方改革の推進といった現場課題の解決を目的に実施しています。社会インフラ施設や工場では、設備管理者が設備の故障や異常を示す表示灯を目視で確認し、対応を判断する運用が一般的でした。しかし、広域施設での巡回や夜間監視には人手と時間がかかり、見落としや対応遅延のリスクが課題となっていました。
本実証では、電力や産業分野の設備保守事業を担う株式会社日立パワーソリューションズにて、表示灯の変化をカメラ映像からAI で検知し、VLMが発報内容を特定・言語化する仕組みを構築。検知結果は自動でレポート化され、管理者へ通知・共有されることで、巡回作業の省力化と異常発生時対応の迅速化の実現をめざします。
さらに、エッジAIによる即時解析とオンプレミスVLMによる内容理解を組み合わせたハイブリッド構成により、リアルタイム性と高セキュリティを両立。クラウドに依存せず現場で完結する解析基盤として、表示灯変化の読み取り精度や巡回作業の省力化と異常発生時対応の迅速化の評価を進めています。
本実証実験は、VLMの特性を活かし、カメラ映像から生成されるテキストデータを利活用することで、異常の把握や状況分析による運営改善に加え、蓄積されたデータを活用した設備維持管理の効率化など、 新たな価値創出と巡回・報告業務の省力化の可能性を検証することを目的としています。駐車場の運営では、利用状況や設備の状態を定期的に確認する巡回・報告業務の負担に加え、設備不良や機器故障によるサービス品質の低下、稼働率の低下、修繕コストの増加といった経営課題が顕在化しています。
本実証では、複数のユースケース候補の中から「ごみの散乱」「枠外駐車」「フェンスやゲートバーなどの設備破損」「駐車フラップなどの機器不具合」を選定し、カメラ映像からVLMがこれらの異常を自動で検出・説明できるかを検証しています。これにより、現地確認や報告業務の省力化に加え、異常発生時の早期把握や、蓄積されたテキストデータを活用した設備維持管理の効率化につながる有効性を確認しています。
今後は、本実証で得られた成果を基に、VLMを活用した駐車場管理支援システムとしての実装・導入を視野に検討を進めていきます。
本実証実験は、太陽光発電所における銅線盗難などの被害防止を背景に、監視業務の高度化と誤検知の低減を目的として、アムニモ社と共同で実施しています。従来のAI監視システムでは、動物を人と誤認したり、草木の揺れや天候変化による誤検知・過剰検知が発生し、現場運用の負担や対応コストの増大が課題となっていました。
本実証では、サーマルカメラ(熱画像カメラ)を用いて侵入検知を行い、エッジ側の低リソースCPU端末に高精度な物体検知AIを搭載し、サーバーまたはクラウド側のVLMが状況を解析・説明するハイブリッド構成を採用しています。日立ソリューションズ・テクノロジーの強みである画像認識エッジAI技術により、現場で即時に映像を解析し、VLMがその結果を文脈的に理解・説明することで、誤検知の抑制と判断根拠の明確化を実現します。
現在は、検知および説明精度の評価、誤検知低減効果の技術検証を進めており、2026年度の実用化を見据えて技術確立をめざしています。
本実証を通じて得られた成果を基に、フロントラインワーカー向けDXの推進に寄与する本格的なソリューション展開をめざすとともに、生成AI技術を活用した新たなソリューションの開発・展開を順次進めてまいります。
また、2025年 11月19日から21日までパシフィコ横浜で開催される「EdgeTech+ 2025」(主催:一般社団法人 組込みシステム技術協会)に出展し、本取り組みを含む最新の生成AI活用事例を紹介します。
株式会社日立ソリューションズ・テクノロジー
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URL: https://www.hitachi-solutions-tech.co.jp/